雨が大嫌いな部長の話 その3
その翌日。
計ったように朝から雨です。
私は、部長より先に出社して席に付いていました。
そこへ部長登場です。
目が合いました。
このタイミングで話しかけるのも変ですので、顎を振って督促のサインを送ります。
(部長に顎で指示するなど大変失礼を致しました。どうかお許を)
【昨日の約束、男だったらちゃんと実行してくださいよ】
【分かってるよ。うるさいな】
そんな無言のやり取りです。
そして、次の瞬間、
少し照れるような表情を浮かべながら、
「お は よ う」と結構通る声で部長はそう言ったのです。
場の空気が一瞬に変わるというのは、こういうことを言うのだと、この時、生まれて初めて経験しました。
だれもが自分の耳を疑ったと思います(笑)。
「驚愕」とはこの事です(笑)。
それから、後輩が15分毎に入れ替わり立ち替わり、僕の机にやってきました。
後輩:何があったんですか?
私:何がって何?
後輩:とぼけないでくださいよ。何か仕掛けたんでしょ。部長に。
私:仕掛けたなんて人聞きが悪いな。僕は何も知らないよ。
後輩:な、訳ないでしょ。
だって、今日は雨が降ってるんですよ。
雨が降ってるのに、部長が自分から「おはよう」って言いましたよ。
これは何か怖ろしい事が起きる予兆じゃないんですか。
私:何、言ってんの。とっても、いいことでしょうが。
部長が率先して挨拶してくれたんだから。
怖ろしいことなんか起きるわけないよ。
それより、仕事仕事。仕事に戻って。
ガヤガヤが続いて午前中は仕事になりません。
でも、昼休みの食事に出掛ける時、誰もが部長に声を掛けていきました。
部長は確かに強面でとっつきにくい印象ですが、どこか憎めず可愛いところがあります。
隠れ部長ファンが社内に結構いるのも、何となく分かるような気がします。
雨の日の不快感大放出の件がクリアーされれば、
このチームは最強のチームになる。
ずっと、そう思っていました。
この勝負、私の勝ちだと思います(笑)。
明日の昼食は「牛タンの上定食」に決定です。
今日は、この辺で。
※ロングインタビューのブログはフィクションです。
実在する人物・団体等とは一切関係がありません。